【生い立ちの記録 】序章

02-生い立ちの記録

ある年、実家がなくなった。

悲しみというより、
毎日を生きているのがやっとな日々だった。

幼少期から今住む古民家に来るまで、

七回の引っ越しを経験した。

あまりにも普通ではないことが続いたせいか、
それに慣れすぎてしまったのか、
そうせざるを得なかったのか——今でもわからないままだ。

そんな中でも、家賃やローン返済の不安がなく、「家さえあればなんとかなる」という思いから、空き家探しを始めた。

探し始めておよそ四年、

ついに古民家への引っ越しが実現した。

誇れるものなど何もなく、
自分の生き方をさらけ出すのが怖く、
恥ずかしくて、
ずっと人知れず生きてきた。

そんな私が、家を所有することができた。


それは、
自分にとって大きな夢が叶った瞬間だった。

鍵を手にするまでの日々は必死だったけれど、

振り返ると、
ふつうでは出会えなかったような人たちとの縁が奇跡のように続いていて、忘れられない時間だったと思う。

「キツい」と感じたことも多かったけれど、
「あれで良かった」と思えることも同じくらいある。


貴重な体験をさせてもらえたことも、今となっては夢のようだ。

けれど、

理想に描いていた夢が叶ったのも、
束の間のことだった。

始まりは、ずっと遠い幼い頃にある。


記憶の中には、静かに残り続ける人がいます。

なぜか同じ人たちのことを、
何度も思い出してしまう。

終わったはずの出来事なのに、
気づけば、
また同じ場面に戻っているような感覚。

あのとき何が起きていたのか、
なぜ今も残り続けているのか。

この記録は、
そんな”記憶の中に残り続ける人たち”についての物語です。


その理由を辿るために、書き始めました。

すべては、生い立ちから。

事実と向き合いながら、書き進めていきます。

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02-生い立ちの記録
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琇夏

2025年5月「第8回 人生十人十色大賞」長編部門へ応募。
出版社からの電話をきっかけに、2026年3月より、原稿用紙3枚ずつ綴る形で投稿を始めました。
noteでは、原稿用紙には書かなかった内容もあわせて綴っています。
少しずつ、記録として残しながら、これからは物語のかたちで綴っていきます。

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