闇雲に探すのは怖い
まず取りかかったのは、埃まみれのまま放置されていた慎人の部屋の片付けだった。
きれいになっていくのが爽快だった。
母と二人でせっせとゴミ出しをし、運び出せない大きな家具はどうしようかと思っていたら、年の暮れ、仕事終わりの慎人が日が暮れた頃に大きなトラックを借りてきて、慌ただしく自分で家具を運び出していった。
家を手放すことになってから、父と母はしばらく手続きに追われていた。
任意売却の手続きへ移ったが、一度だけ内見の問い合わせがあっただけで実際には至らず、時間だけが過ぎていった。
どうせ引っ越すなら方角が気になると思い、インターネットで調べていた。
祖母が分厚い暦で予定を立てていたことから気学の方位が気になっていた。
方位を決めれば探す範囲が絞りやすいうえに、闇雲に探すのは怖いと思うようになっていた。
年が明け、家探しが本格的に始まった。
母と東方位を探そうと一致し、不動産屋さんも東方位にある小さなところへ当たろうと思っていた。
父は関係なく手あたり次第、国道沿いの不動産屋さんにも足を運んでいた。
母が地図を持ちながら東方面へ向かうよう父に持ちかけると、山と田んぼに囲まれた地域に古い家や人気のなさそうな家が点在していた。
その中の一軒。
あの家に住まわれるのは無理かと
人の気配がなく、周りは草木が鬱蒼としていた。
登記情報提供サービスで調べると、登記欄に記載が全くなかった。
父がその家を国道沿いの不動産屋さんに声をかけてみると、数日後に返事が来た。
「あの家に住まわれるのは無理かと」
玄関の裏側は屋根が落ち、床も抜けている状態だと伝えられ、交渉どころかすぐに諦めざるを得なかった。
それでも玄関から見える景観は、空き家にしておくのがもったいないほどだった。
北向きで目の前は山だが、そびえ立つ山ではなく開拓された穏やかな山で上には小学校もある。
裏は大木で覆われていながら日当たりが良く、南側は川でなだらかな傾斜があり見晴らしが何よりも良かった。
父と母が車で周辺を回り、私はGoogleマップで手入れの入っていなさそうな家を探していた。
すると父が「空き家らしい家を見つけた」と言う家が、ちょうど私もGoogleマップで良さそうだと思っていた宅地と一致していて驚いた。
しかも登記情報提供サービスで取り寄せてみると、競売にかかっている最中の物件だとわかった。
金額に驚愕した。
170万円という金額
第一回目で売り出し中と判明し、価格も不動産屋さんでは見たことのない安さだった。
地積四〇〇平方メートル、床面積一八〇平方メートルの物件が百七十万円。
初めて競売物件を知り、興奮した。
周辺環境も土地の大きさも家の大きさも理想に沿っていた。
裏は竹藪が広がっていたけれど日当たりは良く、道路が南側で東隣は藪で隣家がない。
西側は歯科で駐車場があり隣家は離れている、のんびりとした環境だった。
父に伝えると、
「金がないと無理」
そんな当たり前のことを言う。
お金があればこんな苦労はしないのに、何のために必死で探しているのか。
やる気を削がれる。
どうするのかを言わないから困る。母とは「こうしよう、こうしていこう」と前向きに話し合えるのに。
初めての競売物件。
何からどうすればいいかわからず、近所の東方位にあった不動産屋さんへ電話で、
「競売物件の代行はしていませんか」
と断られるのを覚悟で問い合わせてみた。
「やっていませんね」
やっぱり無理かと、
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